コラム ”今知っておきたいこと ~多様化するCADCAM用歯科修復材料~”

3、セラミックス系CAD/CAM用材料

 オールセラミック修復にはコア用セラミックスに前装用セラミックスを積層したもの、またはコア用セラミックス単相で修復物全体を構成したものに大別される。前装用は長石系ガラスセラミックス一種と考えて良いので、ここでは多様なコア用セラミックスについて説明する。コア用セラミックスはガラスセラミックス系、ガラス含浸系、高密度焼結系セラミックスの3種類に大別される。表5にこれらセラミックス系CAD/CAM用切削材料を示す。切削後の処理により以下の4つに分類される。①切削して成形完了のもの、②切削後850℃前後で熱処理して強度向上をはかるもの(寸法変化はない)、③切削後ガラスを加熱軟化して含浸させるもの、④切削後1350-1600℃の最終焼成により寸法収縮し完成するもの。これらの切削後の処理は化学組成により決まり、以下に組成毎に説明を加える。

①切削して完了

(i)長石系ガラスセラミックス

 Vitablocs Mark II(図9)は約2〜10µmの大きなサニディン結晶[(K,Na)AlSi3O8]が長石系ガラス中に約30vol%分散している。曲げ強さは84〜86MPaと低く、用途はインレー、オンレー、ベニアおよび単冠(フルクラウン)に限定される。切削後の熱処理は不要である。熱膨張係数が8.8x10-6/℃と小さいため、前装する場合はアルミナ用陶材VM7が用いられる。Vitablocs TriLuxeはMark IIを元にし、3色を積層したものであり、切削後の着色は不要のものである。

図2 Kennedyの分類

図9 Vitablocs Mark IIブロック

(ii)リューサイト系ガラスセラミックス

 焼付用陶材と類似した微細構造であり、長石系ガラスのマトリックス中にリューサイト(KAlSi2O6)結晶粒子が分散されている。リューサイトの光屈折率は1.47でマトリックスガラスとほぼ同じ屈折率であるため、その析出により透明性を低下させることは少ない。また、リューサイトは焼成後の強度の向上に貢献している。

  Everest G-Blankの熱膨張係数は13x10-6/℃と焼付用陶材とほぼ同じ値であり、リューサイト含有量も同等である。

  2006年、Ivoclar Vivadent社は圧入型のEmpress(現在のEmpress Esthetic pressable ceramics)を改良し、切削可能なブロックとしてIPS Empress CAD(図10)を発売した。 IPS Empress CADはリューサイト含有量が多く、熱膨張係数は17.5x10-6/℃と大きい。約5〜10µmのリューサイト結晶粒子が約45wt%と多量に含まれている。曲げ強さも後者の方が大きい。長石系と同様に、リューサイト系も透明性は高いが、曲げ強さは160MPaと不十分であるため、用途はインレー、オンレー、ベニアおよび単冠(フルクラウン)に限定される。切削後の熱処理は不要である。グラデーションに色彩の異なる層を積層したMulti blocksは単冠、高透光性のHT blocksはインレー、低透光性のLT blocksは単冠と3種類のブロックが提供されている。

図3 Eichnerの分類

図10 IPS Empress CADブロック

②切削後に熱処理

(i)リチウム2ケイ酸系ガラスセラミックス

  IPS e.max CADブロック(図11)は約0.5µmのリチウム1ケイ酸(Li2SiO3)結晶が長石系ガラス中に約40%分散し、青く着色されている。切削加工後の加熱処理(840〜850℃で20〜30分)により、約1.5µmの細長いリチウム2ケイ酸(Li2Si2O5)結晶に成長・結晶化して約70%が結晶質になり分散し、色が歯冠色になり機械的特性は大幅に改良される。3本ブリッジまでの適用が可能とされている。熱膨張係数は10.5x10-6/℃であり、ジルコニアの値と同程度である。

図3 Eichnerの分類

図11 IPS e,mac CADブロック

(ii)ジルコニア強化リチウム1ケイ酸系ガラスセラミックス

  2013年3月に発表されたCeltra Duo(図12)およびSuprinityが該当する。Celtra Duoは、酸化リチウムLi2Oと二酸化ケイ素SiO2のほかに、ガラス相内に約10%のジルコニアZrO2が分子レベルで含有されており、ZLS(Zirconia-reinforced Lithium Silicate)ガラスセラミックスとメーカーは呼称している。ジルコニアは、より低いエネルギーでの結晶核の形成を促進する効果を有しており、小さな結晶をより多く生成することになり、0.6〜0.8µmの顆粒状のリチウム1ケイ酸(Li2SiO3)結晶が多量に生成することになる。e.max CADのリチウム2ケイ酸に比べてかなり小さい結晶粒子であり、透光性は良好である。研削・研磨後の曲げ強さは210MPaであるが、必要に応じ,グレージングのための熱処理(820℃)で370MPaまで向上することができる.

  Suprinityは、Vita社、DeguDent社およびFraunhoferケイ酸塩研究所との3社共同開発によるものであり、基本組成もZLSであることから、Celtra Duoと基本的には同じものであると推定される。しかし、熱処理温度や特性値は少し異なっている。熱膨張係数は12.3x10-6/℃であり、前装する場合はVita VM11の使用が推奨されている。

  Celtra DuoおよびSuprinityとも、カタログでの比較対象商品から見ても、e.max CADに競合するものであり、より強く、より光透過性が高いことが強調されている。

図3 Eichnerの分類

図12 CeltraDuoブロック

③切削後にガラス含浸

  約75%の密度の多孔質コアの隙間に低溶・低粘稠度のケイ酸ランタンガラスを浸透させ、コアの強さの向上を図るものである。多孔質コアの成形は、1989年から耐火模型法(スリップテクニック)が採用されていたが、1997年にCerec inLab用に多孔質ブロックが提供されて以来、現在はCAD/CAM法が主流である。コアの材質としては用途により、アルミナ、ジルコニア、また透光性の高いスピネルが提供されている。

  In-Ceram AluminaのブロックはAl203多孔質であり、ケイ酸ランタンガラスによって,その多孔質空間を満たし,フレームの強さを向上させる.最終的には、アルミナ85wt%,ガラス15wt%のガラスセラミックスが生成される。 しかし、ガラスとアルミナとの光屈折率は、前者が1.49、後者が1.76と、その差が大きいため、粒子界面での光散乱が大きく、光透光性は劣っている。

  In-Ceram Spinelのブロックはスピネル(MgAl2O4)を用いており、光屈折率は1.716とガラスにより近いため透光性は3種の中では最も高いが、強度は最も低いため、審美性を必要とする前歯部のコア用として用いられている。

In-Ceram ZirconiaのブロックはアルミナにCeで安定化したジルコニア(Ce-TZP、12mol%CeO2)を33wt%添加したものであり,曲げ特性,破壊靱性ともIn-Ceram Aluminaより改善されている.しかし、透光性はIn-Ceram Aluminaより低下している。一方、弾性係数は低くなっている.切削成形後、700℃で5分間焼成し,清浄化してからガラス粉末(図13)をペースト状にして塗布・乾燥し、1140℃で30分間真空焼成してガラスを含浸させる。研磨および形態修正後、さらに1000℃で5分間焼成して完成する。

図3 Eichnerの分類

図13 inCeram Zirconiaブロックと含浸用ガラス粉末

④切削後に最終焼成

  金属酸化物粉末を静水加圧(CIP)または熱加圧(HIP)により、高密度にプレスした状態で焼成することにより、緻密なセラミックス焼結体を得ることができる。しかし、高密度焼結体はきわめて硬く強靱であるため、加工困難であり、切削工具の消耗が激しく、作業時間も長くなる。したがって、一般には切削加工時は半焼結体が用いられ、焼成収縮を考慮して大きいサイズに切削加工した後に最終焼成し、歯科修復物が完成する。

(i)ジルコン

  Vita HPCおよびEverest HPCはジルコン(SiZrO4)多結晶体であり、曲げ強さは340MPaと、アルミナ、ジルコニアよりも小さいが、ジルコンの光屈折率は1.81〜1.98と、透光性はアルミナに相当する。臼歯部単冠フルクラウンに適用可能である。焼成前のブロックは珪化ジルコニウム(ZrSi2),ジルコニア(ZrO2)、ポリメチルシルセスキオキサン(PMSS)で構成され、黒色を呈している。CAD/CAM切削後、1575℃で4時間の熱処理により、まずバインダーであるPMSSが熱分解し収縮をする。ZrSi2は酸化し、ZrSiO4とSiO2が生成し、体積が121%膨張する。この両者の補償により寸法変化のない緻密な白色の多結晶体ができあがる。表面ステインにより歯冠色が再現される。熱膨張係数は4.1x10-6/℃ときわめて低く、適合する専用前装陶材であるEverest HPC Stainsを使う必要がある。しかし、Vita社およびKavo社の最近(2014年5月現在)のホームページのCAD/CAM用材料リストから、これらの材料は削除されている。寸法精度は良いが、強度が低く、透光性も低いためと推定される。

(ii)アルミナ

 1994年にNobelBiocare社はProcera AllCeram(現在のNobelProcera Alumina)を開発し、1998年に米国での販売を開始した。当時はジルコニアが歯科応用される前で、Procera AllCeramは画期的に強度の強いオールセラミッククラウンとして注目され、日本では2001年から利用可能となった。 NobelProcera Aluminaは、スキャナーにより支台歯模型の3次元形状を測定し、コンピュータで形状をデジタル化し、CAD/CAMにより耐火模型が作成される。この耐火模型に高純度アルミナを約7トンで圧縮成形し、その塊状物が研削されたのち約1,700℃で焼成され、高密度に焼結したアルミナフレームが完成する。一方、2005年に発売されたIn-Ceram AL、inCoris AL(図14)およびZENOTEC AL Crownはアルミナの半焼結ブロックをCAD/CAM切削し、1500℃で最終焼成するシステムである。焼成前は0.2〜0.4µmの微粒子で構成されている多孔質体であるが、最終焼成により粒径1µm前後の高密度焼結体になり、約16%線収縮する。NobelProcera Aluminaよりも焼成温度が低いため、透光性が劣る。曲げ強さはinCoris ALとIn-Ceram ALが500MPa以上、ZENOTEC ALが360MPaとジルコニアの半分以下であり、単冠および前歯ブリッジのコアにのみ適用可能である。熱膨張係数は7x10-6/℃程度と小さいためアルミナ専用前装陶材が用いられる。

  NobelProcera Aluminaを除き、これらのアルミナブロックは各社の最近(2014年5月現在)のCAD/CAM用材料リストから削除されている。透光性、強度ともに最近のジルコニアより劣り、アルミナを用いるメリットが感じられないためと推定される。

(iii)ジルコニア

  1998年にチューリッヒ工科大学とDensply DeguDent社(当時はDegussa Dental社)との共同開発によりジルコニア製補綴修復物Cercon (当時はDCM = Direct Ceramic Machiningと呼称)が誕生した。2005年に日本で始めて歯科医療用材料として承認されたジルコニアは、このCerconであった。その後、各社から次々とCAD/CAM用ジルコニアブロックが発売され、スキャナー、CADソフト、CAM装置の開発・改良と相まって、歯科用CAD/CAMシステムは、ジルコニアを中心に進展してきたと言っても過言ではない。

  次回、歯科用ジルコニアについて、詳細に説明する。

図3 Eichnerの分類

図14 inCoris ALブロック

表5  CAD/CAM用セラミックス系材料の切削後の処理と組成による分類

処理 組成 商品例 製造メーカー
 なし 長石/長石系ガラス Vitablocs Mark II Vita
Vitablocs TriLuxe Vita
リューサイト/長石系ガラス Everest G-Blank Kavo
IPS Empress CAD Ivoclar Vivadent
 熱処理 リチウム2ケイ酸/長石系ガラス IPS e.max CAD Ivoclar Vivadent
リチウム1ケイ酸/ジルコニア強化ガラス Celtra Duo DeguDent
Suprinity Vita
 ガラス含浸 多孔質結晶/ランタン系ガラス In-Ceram Spinell Vita
In-Ceram Alumina Vita
In-Ceram Zirconia Vita
 最終焼成 ジルコン Vita HPC Vita
Everest HPC Kavo
アルミナ NobelProcera Alumina Nobel Biocare
ZENO Al Crown Wieland
In-Ceram AL Vita
inCoris AL Sirona

ジルコニア

(次回に詳細を表示)

Cercon base 他

(次回に詳細を表示)

DeguDent 他

(次回に詳細を表示)

 

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