コラム ”今知っておきたいこと ~多様化するCADCAM用歯科修復材料~”

4、歯科用ジルコニア

 歯科用ジルコニアは半焼結ブロックから切削した後、最終焼成して修復物として完成される。CAM装置への固定方法が各社で異なるため、これらの半焼結ブロックの形態は様々であるが(図15)、直径98mmで厚み12〜25mmの円盤状ブロックが共通化したサイズ・大きさになりつつある。アイキャスト社からもこのサイズのベレッツァ プレミアム ジルコニアディスクが2013年9月に販売開始されている(図16)。ジルコニアはCAD/CAM法でのみ成形可能であり、ブロック全体が均質で、焼結収縮が均等に生じることが前提条件であり、冷間静水圧成形(CIP: Cold Isostatic Press)により、粉末をプレス成形し、1000〜1100℃で仮焼した半焼結体(グリーンボディ)ブロックが提供されている。これらの焼成前のジルコニアブロックの切削時のビッカース硬さは100以下であり、切削が容易で、切削工具の消耗防止、切削時間の低減に貢献している(図17)。1350〜1600℃で行われる切削後の最終焼成により、17〜22%収縮し、緻密な焼結体が得られる(図18)。この収縮値は原料粉末粒度、結晶性、プレス圧力、プレス方法、仮焼結温度によって変化する。さらに、同じシステムでもロットにより異なっている可能性もあるため、ブロックごとに収縮値が表示または情報が保存されているフラッシュメモリーまたはメモリーチップが付帯されている。

各種ジルコニアディスク   ベレッツァ・プレミアムジルコニアディスク

図15 各種ジルコニアディスク

 

図16 ベレッツァ プレミアム ジルコニアディスク

ジルコニアクラウン構成模式図

図17 CAD/CAM用ブロックの切削時の硬さ

ジルコニアの焼成収縮

図18 ジルコニアの焼成収縮

 歯科用ジルコニアはいわゆる部分安定化ジルコニアであり、C-Proナノジルコニアを除き、Y2O3-ZrO2系(Y-TZP)が大部分である。しかし、特性および微細組織により、従来型TZP系、高透光性TZP系、PSZ系の3つに分類される(表6)。以下に、その概略を説明する。

① 従来型TZP系

 従来型ジルコニアの場合は透光性が十分ではないため、コアとして用い、陶材で前装する必要がある。ジルコニアの熱膨張係数は10-10.5x10-6/℃であり、VM9、Vintage ZR, Cerabienなど、熱膨張係数が9x10-6/℃程度の長石系陶材が前装される。前装方法は従来の築盛法だけでなく、プレス法、CAD/CAM法なども可能である。

 前述したように、歯科用ジルコニアはY2O3-ZrO2系(Y-TZP)が大勢を占めている。一方、CeO2-ZrO2系(Ce-TZP)はY-TZPに比較して、高い破壊靭性値を示すが、曲げ強さと硬さが低く、これまで実用化されていなかった。C-Proナノジルコニアは双方向ナノ複合化という概念により、特性改善が達成された。すなわち、Ce-TZP粒内に数百nmサイズのAl2O3粒子が、さらにAl2O3粒内にも数十nmサイズの微細なCe-TZP粒子がそれぞれ取り込まれた組織に複合化した。このC-ProナノジルコニアはY-TZPと同等以上の曲げ強さを示し、さらに靭性値はきわめて高い値を実現した。しかし、透光性に劣ることが欠点である。

② 高透光性TZP系

 2011年から2012年にかけて、各社から高透光性ジルコニアが提供されてきた。これらの高透光性ジルコニアの透光性は従来型に比較して40〜50%改善されている(図19)。この透光性の改善は、光散乱の原因物質であったアルミナの含有量を0.25重量%から、0.05重量%以下に下げたことが大きく貢献している。この高透光性ジルコニアを用いることにより、ジルコニアだけで最終形態にまで成形し、部分的に表面ステインだけで色を合わせるという、いわゆる“フルカントゥア”が適用可能となる。“フルジルコニア”あるいは“モノリシック”と呼ばれる場合もある。

  長石系陶材の曲げ強さは100-120MPaとジルコニアの約1/10であり、陶材を使う限り、ジルコニアの強さを生かせないのが現状であった。すなわち、陶材を前装したジルコニアクラウンの臨床上のトラブルは陶材のチッピングが大部分であった。“フルカントゥア”は、この問題を解決してくれる。また、陶材を前装するための厚みが不要となるため、歯質削除量が少なくなるという利点もある(図20)。さらに、切削成形後で最終焼成前に着色液に浸漬または塗布後に焼成することにより、多様な色彩に部分的な着色が可能となっている。色調をあらかじめ着色されたブロックを用いることもできる。

 ジルコニアが口腔内に露出した場合、懸念されるのは対合歯の摩耗であるが、鏡面研磨したジルコニアに対合するエナメル質の摩耗は少ない。

ジルコニアクラウン構成模式図

図19 歯科修復材料の透光性比較

図4 歯冠外アタッチメント(mini-Dalbo)を用いた義歯

図20 ジルコニアクラウン構成模式図

③ PSZ系

 2013年10月、最終焼成後の色彩が異なる4層より構成された高透光性ブロック(Katana Zirconia ML)がクラレノリタケ社から提供された。このブロックは、Y-TZP系よりもY含有量が多く、立方晶が共存しており、PSZ系に分類される。Y含有量の増加されたため、耐低温劣化特性がY-TZP系よりも、有意に改善されている。

  2014年3月に、東ソー社はZpex Smileという、さらに飛躍的に透光性の高いジルコニア焼結体用粉末の提供を開始した。高透光性ジルコニアがアルミナ含有量を少なくしたY-TZP系であることは前述したが、Zpex SmileはYの含有量を増やし、立方晶を共存させることにより透光性を飛躍的に改善したものであり、いわゆる従来から知られているY-PSZ系に相当する。正方晶が一軸性光学異方体であることに対し、立方晶は光学的等方体で光散乱が少なく、焼成体の透光性を格段に高めることができる。また、Y含有量が多いため、耐低温劣化特性にすぐれており、134℃で240時間の過酷な放置条件においても、変態は観測されてなかった。反面、曲げ強さは615 MPaとTZP系の約半分しかない。したがって、前歯部修復物として適用可能であるが、臼歯部には無理がある。東ソー社も最初から”for anterior”としての使用だけを推奨している。現在、この原料粉末を用いた半焼結のCAD/CAM用ブロックが次々と商品化されている。2014年6月にZirkonzahn社はPrettau Anteriorを発売し、日本国内では2014年9月にアイキャスト社がベレッツァ ハイトランス ジルコニアを発売開始した(図21)。切削時のビッカ−ス硬さは42、焼成温度は1450℃で2時間、焼成収縮は約19%と、TZP系の半焼結ディスクと同様な加工・焼成条件が適用できる。

図4 歯冠外アタッチメント(mini-Dalbo)を用いた義歯

図21 フルカントゥアジルコニアクラウンの外観写真。左より、従来型(ベレッツァ プレミアム ジルコニア ホワイト)、

高透光性(ベレッツァ プレミアム ジルコニア TL)、PSZ系(ベレッツァ ハイトランス ジルコニア

表6  CAD/CAM用ジルコニアの組成による分類

組成 商品名 製造メーカー

 TZP ジルコニア

 

従来型 Cercon base DeguDent
In-Ceram YZ Vita
inCoris ZI Sirona
ZENOTEC Zr Bridge Wieland
Aadva ジルコニアST GC
Lava Frame Zirconia 3M Espe
Everest ZH Kavo
Everest ZS Kavo
カタナジルコニア クラレ・ノリタケ
NobelProcera Zirconia Nobel Biocare
IPS e.max ZirCAD Ivoclar Vivadent
Z-CAD White Metoxit
ベレッツァ プレミアム ジルコニア ホワイト アイキャスト
C-Pro ナノジルコニア パナソニック・ヘルスケア
ジルコニアディスク アダマンド
ceramill zi Amann Girrbach
KZR-CAD Zr 山本貴金属
ジレストCAD 京セラ
高透光性 Cercon ht DeguDent
YZ Disc HT Vita
inCoris TZI Sirona
ZENOSTAR ZR Wieland
Zirkonzahn Prettau Zirkonzahn
Aadva ジルコニアEI GC
Lava Plus 3M Espe
C−Pro HTジルコニア パナソニック・ヘルスケア
Z-CAD HTL Metoxit
ベレッツァ プレミアム ジルコニア TL アイキャスト
ceramill Zolid Amann Girrbach
BruxZir Glidewell
松風ディスクZR-SS 松風
 PSZ ジルコニア カタナ ジルコニアHT、ML クラレ・ノリタケ
Prettau Anterior Zirkonzahn
ベレッツァ ハイトランス ジルコニア アイキャスト

おわりに

 CAD/CAMシステムの活用により、歯科修復物に使用可能な素材は多様化し、修復物の適合精度も年々向上してきている。さらに、オープンシステム化が進み、システムにかかわらず、素材は選択できる時代になってきた。さらに、単一素材から複合または積層したものまで、種々の構成が選択可能である。さらに、周辺技術・材料の進歩も著しく、デジタルデンティストリーによる審美歯科修復技術が益々進展していくものと期待される。