コラム ”パーシャルデンチャーを読み解く”

3、欠損をどのようにとらえていますか?

 パーシャルデンチャーは1歯欠損から1歯残存まであらゆる欠損形態を対象としている。そのため症例によっては義歯の設計ができないというより治療計画をたてることができないということが起きている。一般的な治療計画とは図1のように診査から最終補綴まで流れている。この間の治療が多岐にわたるとどこから手をつけて良いのかがわからなくなるため治療計画が立たなくなるのである。少数の歯に限局するようなう蝕や少数歯欠損の補綴については診査から最終治療まで治療の流れを頭に思い描けるのに、大規模な補綴が必要になるとなぜイメージできなくなるのだろうか?

図1 治療の流れ

図1 治療の流れ

 少数歯に限局する欠損の場合には問題となる歯や欠損だけを対象にすれば何とか最終補綴まで到達できるのだが、規模が大きくなるとどこまで固定性にしどこから可撤性にするのかを考慮するだけでなく、咬合の要素の変更を余儀なくされる場合も少なくない。そのため、術者は欠損の形態や咬合関係について整理して対応しないとどこから手をつけて良いのかわからなくなってしまうのである。そこで今回は欠損についてどのように整理したら良いのかを述べていく。

◇ 欠損の分類

 目の前にある欠損がどのような状況にあるのかを把握することが非常に重要なことである。そのためには欠損の分類がやはり必要になってくる。そこでここでは欠損の分類について説明していく。

1)Kennedyの分類

 1928年に発表されたもので理論的で簡潔で現在世界的に最も広く用いられている分類であり、残存歯に対する欠損部の位置関係からⅠ級からⅣ級までの4つに分類されている(図2)。

図2 Kennedyの分類

図2 Kennedyの分類:I級は両側遊離端欠損、II級は片側遊離端欠損、III級は中間 欠損、IV級は正中をまたぐ中間欠損。I級からIII級まではメインの欠損の外に中間欠 損がある場合、類で表す。たとえば、図中のII-2はII級2類ということになる。

2)Eichnerの分類

 EichnerはKennedyの分類とは異なり機能的な観点から咬合位が残存歯で支持されているか否かを分類している(図3)。この分類は咬合支持の状況を把握するためには有用であるが、歯の欠損部位や支持域の具体的な位置はわからないため、Kennedyの分類と併用されることが多い。

図3 Eichnerの分類

図3 Eichnerの分類

3)宮地の咬合三角

 最近では、咬合支持と欠損との関係を効率よく分類している宮地の咬合三角がある(図4)。欠損補綴を行う上で、咬合支持の回復は最重要課題のひとつである。そこでこの分類は咬合支持と欠損との関係からその崩壊程度を分類しており、補綴治療を進めていく上では有用な分類の1つである。

図4 宮地の咬合三角

図4 宮地の咬合三角

宮地は欠損を有する歯列を残存歯数と欠損歯数と咬合接触の支持部位数でその崩壊程度を4つに分類している。第Ⅰエリアは欠損レベルと呼ばれており、咬合支持(点)数が10以上、1~8歯欠損で少数歯欠損と呼ばれるグループである。このグループは一般的には咬合をはじめとする種々の条件が恵まれており、単に咬合接触が減少しているだけで機能的には問題ないことが多い。治療の選択としては固定性の補綴物による介入を行うことが多いが、場合によっては積極的な補綴的介入を控え、短縮歯列のまま経過を観察することもある。ただし、これらの選択に際しては、補綴処置を選択した場合と短縮歯列を選択した場合の患者が得られる利得と危険を十分に評価する必要がある。そこには、患者の年齢や性格や口腔内の条件などに加え、患者の日常生活におけるQOLの要求度も十分に考慮しなければならない。第Ⅱエリアは欠陥レベルと呼ばれており、咬合支持数が9~5、5~15歯欠損の多数歯欠損と呼ばれるグループである。このグループは咬合支持が機能障害を惹起する可能性があり、欠損の大きさによってはすれ違い咬合などに憎悪、進行してしまう可能性があるグループである。そのため咬合関係の精査が必要であり、咬合支持数が部分的にある場合には最小の補綴介入で効果が得られるが、崩壊の兆候がみられ始めた場合には患者のQOLを考慮し、全顎的な補綴設計を考慮しなければならなくなることがある。第Ⅲエリアは崩壊レベルと呼ばれており、10~18歯欠損のうち、咬合支持が4ヵ所以下になり類すれ違い咬合と呼ばれるきわめて特殊なグループであり臨床的に難症例の代名詞となっている。このグループは崩壊を防止するために積極的に全顎的な補綴設計を取り入れなければならない。第Ⅳエリアは消失レベルと呼ばれており、咬合支持数が4以下で、かつ歯数が10歯以下の少数歯残存歯症例に近いグループである。残存歯数の減少に従い咬頭嵌合位の喪失、咬合高径の低下を伴うが、すれ違い咬合と異なり崩壊の傾向は緩和され、安定傾向になっている。

◇ 欠損をどのように手を加えるのか?

 上述の分類を整理してみると、欠損形態と咬合支持に分けて考えることができる。それではこれらに対してどのような戦略で臨むと良いのであろうか?

1)欠損形態

 義歯の設計原則のところで述べたが、義歯の設計はシンプルな方が良い。そのためには欠損形態をシンプルにする必要がある。Kennedyの分類の○級×類の“類”を減らす戦略で治療計画を立案し、それに則って前処置を行うのである。たとえば上顎右167. 左16欠損の患者の場合、Kennedy分類では2級2類になる。残存歯の条件に特に問題がない場合、この欠損に対しそのままパーシャルデンチャーを製作すると口蓋を大きく被覆するような大規模なものとなり患者にとって使い勝手が悪くなる。しかし、前処置で上顎右1. 左1と6に対して固定性ブリッジで対応できれば欠損は上顎右67のみとなり、最終的なパーシャルデンチャーを小さくすることが可能となるため患者にとっては使い勝手がよくなる(図5).

図5a 上顎右167. 左16欠損、II級2類(Kennedyの分類)   図5b 図5aをブリッジにより中間欠損を補綴することによりII級に変更

図5a 上顎右167. 左16欠損、II級2類(Kennedyの分類)

 

図5b 図5aをブリッジにより中間欠損を補綴することによりII級に変更

2)咬合支持

 Eichnerの分類、宮地の咬合三角からもわかるように咬合支持が減少すると困難な症例になる。その中でも一般的にはEichnerの分類ではB4・C1が、宮地の咬合三角では第Ⅲエリアが難しいとされている。そのため咬合支持に対する戦略はこれらのエリアに踏み込まないような治療計画を立案し、前処置を行うことが重要である。この中にはいわゆる「すれ違い咬合」も含まれており、特に難しい症例と考えられている。

 具体的には宮地の咬合三角の第Ⅲエリアは前述の通り困難な症例で、前処置によって第Ⅱエリアに引き戻す場合と第Ⅳエリアに進める場合がある。臼歯の咬合支持が得られるのであれば可能な限り欠損補綴は固定性ブリッジを選択し、最終的にブリッジで対応できないところをパーシャルデンチャーで対応するというのが原則である。もし固定性ブリッジで欠損補綴を行っても咬合支持が得られない場合には積極的にオーバーデンチャーなどに移行するよう治療計画を変更していくのである。

 それでは欠損形態と咬合支持のどちらを優先すべきだろうか?筆者は咬合支持に対する戦略を優先してまず治療計画を立案している。先にも述べたように臼歯部での咬合支持をどのように回復するかを考えるのである。咬合高径の変更を加えるような場合、その咬合支持がどのような補綴物で構成させるかが重要である。パーシャルデンチャーは義歯を外した時の残存歯のみでの咬合支持も同時に考慮しなければならない。

 欠損形態については前述のようにブリッジを用いることにより義歯の設計が小さくなるような場合には積極的にブリッジにより補綴を行う。たとえば,下顎右5. 左67欠損の場合、右の臼歯部をブリッジで補綴することにより残りのパーシャルは片側処理の設計にすることが可能となる。一方下顎右5. 左567欠損の場合、右の5をブリッジで補綴しても義歯の設計は両側設計になってしまうためこの場合、下顎右5はパーシャルデンチャーに含める(図6)。

図6a 下顎右5. 左67欠損、中間欠損をブリッジにすることにより下顎左67の片側設計に変更   図6b 図6aと異なり中間欠損をブリッジで補綴しても両側設計になるため中間欠損も義歯に組み込む

図6a 下顎右5. 左67欠損、中間欠損をブリッジにすることにより下顎左67の片側設計に変更

 

図6b 図6aと異なり中間欠損をブリッジで補綴しても両側設計になるため中間欠損も義歯に組み込む

 このように治療計画を考える際には、咬合支持をどのように回復し欠損形態をシンプルな形にするかが重要である。また、長期的な経過を考えた場合にも宮地の咬合三角、Eichnerの分類の危険な領域に踏み込まないよう残存歯、欠損に対して対応することが大切である。欠損補綴は補綴治療が終わるまでの治療計画とその後の口腔内の欠損の進行をどのようにコントロールするかが重要である。そのため常に欠損形態と咬合支持の理解が肝要である。