伴 清治 先生(愛知学院大学歯学部)
有機系材料は重合、熱軟化、切削操作により成型することが可能であるため、多様なCAD/CAMシステムにおいて利用可能である。例えば光造形法は光重合型レジン、インクジェット法はアクリル系モノマー、樹脂押出し法およびSLM法は熱可塑性樹脂が使用可能である。歯科修復物としては切削法が中心であり、表1にCAD/CAM用有機系歯科材料の組成と用途による分類を示す。材質的に以下の5種に大別される。
(1)アクリルレジン
PMMA100%のディスクであり、ZENOTEC PMMA Cast、cara Cast PMMAおよびIPS AcryCADは鋳造・圧入原型用として用いられている。 Cercon Base PMMA、ZENOTEC Pro Fix、Telio CAD、Ceramill temp、cara Temp PMMA、山八レジンディスク、ベレッツァ PMMAディスク(図1)は暫間被覆冠/プロビジョナルレストレーション用として利用されている。
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図1 ベレッツァ PMMAディスク |
(2)ガラス繊維強化レジン
Everest C-Tempはガラス繊維で強化した高分子であり均質構造を有している。曲げ強さ450MPa、曲げ弾性係数2GPaであり、臼歯部ロングスパンに適用可能である。さらに化学的溶解性および吸水率が低いため長期間(12ヶ月まで)のプロビジョナルレストレーションとして利用できる。さらに、レジン系材料で前装するコアとして利用することができる。
(3)コンポジットレジン
表2にCAD/CAM用コンポジットレジン材料の特性比較を示す。 Paradigm MZ100は成型修復用コンポジットレジンZ100を基に作られており、Bis-GMA/TEDMA系モノマーに0.6µmのシリカ・ジルコニアフィラーが66vol%配合されている。光重合のコンポジットレジン用のステインやグレージングが使用可能である。また、口腔内でのリペアーが可能であり、インレー、アンレー、フルクラウン、ベニアに適用可能である。 CAD-Tempは単色のmonoColorと多層構造のmultiColorの2種がある。4本ブリッジまで適用可能となっている。高分子量で高架橋のアクリルレジンであるが、無機フィラーは15wt%と少なく、弾性係数は2.8GPaと小さく、柔軟である。MRP 材料(Microfiller Reinforced Polyacrylic)と呼称されている。
2012年10月10日に日本国内販売が開始された3M社製Lava Ultimate(図2)はCAD/CAM切削用に開発されたコンポジットレジンで、約80wt%のフィラー含有量となっている。直径20nmのシリカと4−11nmのジルコニアナノサイズ粒子を凝集した0.6-10µmのナノクラスターと呼ばれる粒子が配合されている。レジンマトリックスは熱硬化性レジンが用いられている。レジンナノセラミック(RNC)と新しい分類ジャンルを提唱し、従来のガラスセラミックおよびコンポジットレジンを競合材料としており、クラウン、インレー、アンレー、ベニアを主な用途としている。高い破壊靭性、曲げ強さ、レジリエンスを有し、優れた耐久性を示し、対合歯の摩耗も少ないとしている。
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図2 Lava Ultimate |
これに遅れること約1年後の2013年11月21日、Vita社はEnamicというCAD/CAM用コンポジットレジンブロックを日本で販売開始した。独では2013年3月に既に販売されていた。これは、多孔質ガラスを86wt%(75vol%)含み、その空隙にUDMAとTEGDMAモノマーを含浸・共重合し、高分子含有量を14wt%(25vol%)とした複合体である。セラミックネットワークがポリマーネットワークによって強化されたと表現されている。象牙質に近似した弾性係数30GPaを有しており、咬合応力を分散できるとしている。Ultimateより硬いが、曲げ強さおよび破壊靭性ともUltimateより少し小さい。
2014年4月1日にCAD/CAM用コンポジットレジンブロックが日本国内において健康保険適用材料となり、グラディアおよびセラスマート(図3)、松風ブロックHC(図4)が利用可能となった。また、2014年6月1日にLava Ultimateおよび6月2日にVita Enamicが健康保険適用材料となった。これらは既存の硬質レジンの組成・製造技術を活用し、加圧・加熱重合させたもので100%近い重合率で良好な機械的性質と優れた化学的耐久性を有している。小臼歯の歯冠補綴物にのみ保険適用可能であるが、金属製補綴物の代替えとして、審美性を優先する場合の選択肢が増えることは歓迎すべきことである。さらに、山本貴金属社からはKZR-CAD HRが市販されるなど、これらに相当するCAD/CAM用コンポジットレジンブロックが各社から次々と供給されると思われる。
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図3 セラスマート |
図4 松風ブロックHC |
(4)ワックス
ZENOTEC WaxおよびCeramill Waxの融解温度は100〜130℃でワックスとしては高温であり、CAD/CAMでの切削が可能である。焼却残渣はなく、鋳造原型として、またセラミックおよび前装陶材の圧入原型として利用される。山八ワックスディスク、ベレッツァ WAXディスク(図5)、松風ディスクワックスと国内メーカーもワックスディスクを提供しているが、成分的にはワックスよりもレジンに近い。
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図5 ベレッツァ WAXディスク |
(5)ポリウレタン
ZENOTEC Modelが該当する。作業可能最高温度は80℃であるが、熱膨張係数は50-55x10-6/Kと比較的低く、歯列模型などの大きな模型が精度良く製作可能である。また、曲げ強さは50〜55MPaと壊れにくく、寸法安定性も良好である。
表1 CAD/CAM用有機系材料の組成と用途による分類
| 組成分類 | 用途 | 商品名 | 製造メーカー |
|---|---|---|---|
| アクリルレジン | 鋳造・圧入原型 | ZENOTEC PMMA Cast | Wieland |
| Ceramill PMMA | Amann Girrbach | ||
| IPS AcryCAD | Ivoclar Vivadent | ||
| cara Cast PMMA | Heraeus Kulzer | ||
| 暫間クラウン | Cercon Base PMMA | DeguDent | |
| ZENOTEC Pro Fix | Wieland | ||
| Telio CAD | Ivoclar Vivadent | ||
| Ceramill temp | Amann Girrbach | ||
| cara Temp PMMA | Heraeus Kulzer | ||
| 繊維強化レジン | 山八レジンディスク | 山八歯科工業 | |
| コンポジットレジン | ベレッツァ PMMAディスク | アイキャスト | |
| Everest C-Temp | Kavo | ||
| Paradigm MZ100 | 3M Espe | ||
| VITA CAD-Temp | Vita | ||
| クラウン | *Lava Ultimate | 3M Espe | |
| *Enamic | Vita | ||
| *グラディア・ブロック | GC | ||
| *セラスマート | GC | ||
| *ブロックHC | 松風 | ||
| Ceramill comp | Amann Girrbach | ||
| KZR-CADハイブリッドレジン | 山本貴金属 | ||
| ワックス | 鋳造・圧入原型 | ZENOTEC Wax | Wieland |
| Ceramill Wax | Amann Girrbach | ||
| 山八ワックスディスク | 山八歯科工業 | ||
| ベレッツァ WAXディスク | アイキャスト | ||
| 松風ディスクワックス | 松風 | ||
| ポリウレタン | 歯列模型 | ZENOTEC Model | Wieland |
*健康保険適用材料
表2 CAD/CAM用コンポジットレジン材料の特性比較(メーカー公示値)
| 商品名 | 製造メーカー | 曲げ強さ(MPa) | 弾性係数(GPa) | ビッカース硬さ |
|---|---|---|---|---|
| Paradigm MZ100 | 3M Espe | 140 | 7 | - |
| VITA CAD-Temp | Vita | 80 | 2.8 | - |
| Ceramill comp | Amann Girrbach | 191 |
13.812 | 81.5 |
| *Lava Ultimate | 3M Espe | 235 | 15 | 100 |
| *Enamic | Vita | 150-160 | 30 | 250 |
| *グラディア・ブロック | GC | 208 | - | 107 |
| *セラスマート | GC | 240 | - | 74 |
| *ブロックHC | 松風 | 191 | - | 66 |
| KZR-CAD HR | 山本貴金属 | 235±5 | 8±0.2 | 90±5 |
*健康保険適用材料